はじめに:なぜ今、自社アプリとLINE連携が必要なのか?
近年、多くの企業が顧客とのエンゲージメント強化や、よりパーソナルな情報提供を目指しています。その中で、自社開発のモバイルアプリとLINEの連携が注目されています。
LINEは、日本国内で圧倒的なユーザー数を誇る主要なコミュニケーションプラットフォームです。多くの人が日常的に利用しており、情報伝達手段として非常に有効です。
一方、モバイルアプリはダウンロードしても利用されなくなる「アンインストール」や「プッシュ通知のオフ設定」といった課題に直面することが少なくありません。これにより、せっかく獲得した顧客との接点が失われてしまうケースが見受けられます。
このような背景から、高い利用率を誇るLINEと自社アプリを連携させることで、アプリの利用促進や顧客との継続的なコミュニケーションを強化することが、現代のデジタルマーケティングにおいて重要になっているのです。
本記事では、アプリとLINE連携の具体的な活用例やメリット・デメリット、費用、そして連携の進め方について詳しく解説していきます。
アプリ利用率の低下という課題
多くの企業が顧客接点として自社アプリを開発していますが、その利用率の低下に頭を悩ませています。スマートフォンの画面はすでに多くのアプリで埋め尽くされており、新しいアプリを追加すること自体にユーザーは抵抗を感じがちです。
特に、以下のような課題が指摘されています。
-
ダウンロードのハードルが高い: バッテリー消費やストレージ容量を気にするユーザーが多く、「すぐに不要になりそう」といった理由でダウンロードをためらいます。ある調査では、店舗でのダウンロード案内を約7割が断った経験があるとされています。
-
ダウンロード後の格納問題: ダウンロードしても、他のアプリに埋もれてしまい、顧客接点として機能しにくくなります。
-
継続利用率の低さ: 一般的に、アプリの継続利用率はダウンロード後1日で約20%まで低下し、1カ月後には一桁台になる傾向があります。
-
プッシュ通知の無効化: 多くのユーザーがSNSやメッセンジャーアプリ以外の通知をオフにしており、重要な情報が届きにくくなっています。
これらの課題により、せっかく開発したアプリが効果的な顧客接点として機能しづらい状況が生まれています。
自社アプリとLINE連携で何ができる?Messaging APIの活用例
自社アプリとLINEを連携させることで、ユーザーとのコミュニケーションを劇的に改善し、アプリの利用促進に繋げることができます。特にLINEが提供するMessaging APIを活用することで、様々な機能連携が可能になります。
Messaging APIは、LINE公式アカウントとユーザーとのやりとりをよりパーソナルかつ自動化できる強力なツールです。具体的には以下のような活用例が考えられます。
-
プッシュ通知の開封率向上: アプリからの通知に加え、LINEを通じたメッセージ配信でユーザーへの到達率を高めます。リッチメッセージなどを活用し、視覚的に訴求することも可能です。
-
パーソナライズされた情報配信: ユーザーのアプリ利用状況や属性に基づき、LINE上でセグメントされたメッセージやおすすめ情報を配信できます。
-
ユーザー行動に基づく自動応答・トリガー配信: アプリ内での特定の行動(例:購入完了、カート放棄)をトリガーとして、LINEで自動的にフォローメッセージを送信できます。
-
ユーザーとの双方向コミュニケーション: FAQ対応のチャットボット設置や、オペレーターへの引き継ぎなど、LINEを介したユーザーサポートを強化できます。
-
アプリ内機能の一部利用: LIFF(LINE Front-end Framework)などを活用し、LINEのトーク画面からアプリの一部の機能(例:予約、会員証表示)にアクセスできるようにすることも可能です。
-
One to Oneマーケティングの実現: アプリで蓄積したユーザーデータをLINEのメッセージ配信と連携させることで、一人ひとりに最適化された情報提供やキャンペーンを展開できます。
これらの連携により、単なる情報伝達に留まらず、ユーザーエンゲージメントの向上やリピート率の向上を目指すことができます。
(1)プッシュ通知の強化(開封率向上)
自社アプリのプッシュ通知は、ユーザーに情報が届きにくいという課題を抱えがちです。一方、LINEは国内利用者数が非常に多く、メッセージの開封率が高い傾向にあります。
アプリとLINEを連携することで、LINEのMessaging APIを活用し、アプリからの通知をLINEで受け取れるように設定できます。これにより、ユーザーは普段使い慣れたLINEで通知を受け取れるため、メッセージの見落としを防ぎ、開封率の向上が期待できます。
LINEメッセージの開封率を高めるためには、プッシュ通知やトークリストに表示されるメッセージの内容が重要です。
-
短く分かりやすい通知文: トークリストの表示に限りがあるため、簡潔さが重要です。
-
緊急性や限定感の演出: 「本日限定」「今だけ」といった言葉でユーザーの関心を引きます。
-
絵文字の活用: メッセージを目立たせる工夫です。(ただし、機種により表示が異なる場合があります)
-
最適な配信タイミング: ユーザーがLINEを確認しやすい時間帯に配信します。
工夫の例 |
具体的な表現例 |
---|---|
短く分かりやすい |
新商品入荷のお知らせ |
緊急性・限定感 |
【本日限定】10%OFFクーポンプレゼント! |
絵文字の活用 |
⚡️タイムセール開始!✨ |
アプリの重要な通知をLINEで確実に届けることで、ユーザーのアプリへの再訪や特定のアクションを促しやすくなります。
(2)パーソナライズされた情報配信(セグメント配信、レコメンド配信)
自社アプリとLINEを連携することで、顧客一人ひとりのニーズに合わせたきめ細やかな情報配信が可能になります。特に効果的なのが「セグメント配信」と「レコメンド配信」です。
LINE公式アカウントの標準機能でも年齢・性別・地域などの「みなし属性」や、過去のメッセージ開封・クリック履歴に基づいたセグメント配信は可能ですが、アプリ連携により、さらに高度なパーソナライズが実現します。
アプリ連携によるセグメント配信の例:
-
購買履歴に基づく配信: 特定の商品カテゴリを購入したユーザーへ関連情報を配信
-
アプリ利用状況に基づく配信: 特定機能の利用頻度や最終ログイン日時に合わせた配信
-
会員ランクや属性に基づく配信: プレミアム会員限定の先行情報や、特定の属性向けキャンペーン情報
このように、自社アプリで蓄積された詳細な顧客データ(購買履歴、利用行動など)とLINEアカウントをID連携することで、ユーザーの行動や潜在的なニーズに基づいたメッセージをピンポイントで届けられます。これにより、メッセージの開封率やクリック率、さらには購買率の向上が期待でき、配信コストに対する費用対効果を高めることにつながります。
また、過去の閲覧・購入情報に基づいた「レコメンド配信」も可能となり、ユーザーにとって価値の高い情報を適切なタイミングで提供できるようになります。
(3)ユーザー行動に基づく自動応答・トリガー配信
自社アプリでのユーザー行動とLINE連携を組み合わせることで、よりタイムリーかつパーソナルな情報配信が可能になります。
例えば、アプリ内で特定の商品をカートに入れたまま購入していないユーザーに対して、LINEでその商品のリマインダーメッセージを自動配信するといった活用方法が考えられます。
LINE公式アカウントの「応答メッセージ」機能は、特定のキーワードに自動で返信する機能ですが、これをアプリ側のユーザー行動と連携させることで、さらに高度な自動応答が実現できます。例えば、アプリ内で「問い合わせ」ボタンを押したユーザーに、LINEでFAQページへのリンクを自動送信するなどです。
このように、ユーザーの行動をトリガーにしてLINEで適切なメッセージを配信することで、購買意欲を高めたり、サポートを効率化したりすることが期待できます。
【活用例】
-
カート放棄ユーザーへのリマインダー:アプリでの行動をトリガーにLINEで通知
-
特定ページ閲覧ユーザーへの関連情報配信:興味に基づいた情報提供
-
アプリ内アクションへの自動応答:FAQやサポート情報をLINEで提供
これらの自動応答やトリガー配信は、Messaging APIを活用することで実現可能になります。
(4)ユーザーとの双方向コミュニケーション
自社アプリとLINEを連携することで、企業とユーザー間でのスムーズな双方向コミュニケーションが可能になります。
LINEのMessaging APIを活用すれば、ユーザーからのメッセージに対して自動応答するだけでなく、個別の問い合わせに対して担当者がLINE上で直接対応することも可能です。
これにより、ユーザーは慣れ親しんだLINEアプリを使って気軽に質問や相談ができるため、企業への問い合わせハードルが下がります。
例えば、
-
商品・サービスに関する問い合わせ:チャットボットによるFAQ対応や、オペレーターへのスムーズな引き継ぎ
-
予約・申し込みに関する確認や変更:LINE上での手続きサポート
-
アプリ利用中の不明点に関する質問:リアルタイムでのサポート提供
といった形で、ユーザーの疑問や困りごとに対して迅速かつパーソナルな対応が実現できます。
これは、従来のメールや電話、アプリ内問い合わせフォームと比較して、ユーザーにとってより手軽でスピーディーな顧客体験を提供することにつながります。
コミュニケーション手段 |
特徴 |
---|---|
LINE連携 |
手軽、スピーディー、パーソナル対応可能 |
メール |
返信に時間がかかる場合がある |
電話 |
対応時間・場所に制約がある |
アプリ内フォーム |
アプリ起動が必要、リアルタイム性に欠ける |
(5)アプリ内機能のLINE上での利用(一部)
自社アプリの一部の機能を、ユーザーはLINEアプリ上で利用できるようになります。これは「LINEミニアプリ」というLINEのプラットフォームを活用することで実現可能です。
LINEミニアプリは、アプリをインストールすることなく、LINE上でサービスを利用できるウェブアプリケーションです。例えば、飲食店や美容院の予約、デジタル会員証、順番待ち受付といった機能をLINE上で提供できます。
これにより、ユーザーはアプリを起動する手間なく、LINEからスムーズにサービスを利用できるため、利便性が向上します。特に利用頻度の高い一部機能をLINEで提供することで、ユーザーの利用ハードルを下げ、エンゲージメントを高める効果が期待できます。
ただし、すべてのアプリ機能をLINEミニアプリで提供できるわけではなく、機能によっては制限があります。また、サービスメッセージの送信など、一部機能はMessaging APIとの連携が必要になります。
LINEミニアプリで実現できる機能例:
-
飲食店や美容院の予約
-
デジタル会員証
-
順番待ち受付・呼び出し
-
モバイルオーダー
(6)利用状況や購買履歴に基づいたOne to Oneマーケティング
自社アプリとLINEを連携することで、ユーザーのアプリ利用状況や購買履歴といった詳細なデータをLINE上でのコミュニケーションに活用できます。これにより、一人ひとりの顧客に合わせた「One to Oneマーケティング」が可能になります。
One to Oneマーケティングとは、顧客の属性や行動履歴に基づいて最適な情報を提供する「パーソナライズ」を、顧客理解・体験向上のための全体設計として捉え、顧客との良好な関係性を築き、ロイヤルティを高めることを目的としたマーケティング活動です。
アプリのデータとLINE連携によるOne to Oneマーケティングの活用例としては、以下のようなものが挙げられます。
-
購入履歴に基づいたレコメンド配信: 特定の商品を購入したユーザーに、関連商品や次に購入しそうな商品をLINEで提案する。
-
利用状況に応じたステップメール: アプリの利用頻度が低いユーザーに限定クーポンを配信したり、特定の機能を使ったユーザーに次のアクションを促す情報を送る。
-
セグメント別の限定キャンペーン告知: 購買金額や頻度でセグメント分けし、それぞれの顧客層に最適なLINEメッセージで特別キャンペーンを告知する。
このように、アプリで蓄積した顧客データをLINEの柔軟なメッセージ配信と組み合わせることで、顧客一人ひとりに響くコミュニケーションを実現し、顧客満足度やエンゲージメント、さらには収益の向上に繋げることが期待できます。
自社アプリとLINE連携のメリット・デメリット
自社アプリとLINEを連携させることで、様々なメリットが期待できる一方、いくつかのデメリットも存在します。導入を検討する際には、これらを十分に理解しておくことが重要です。
メリット
-
一人ひとりにパーソナライズされたメッセージを送れる: ユーザーの行動や属性に基づいたOne to Oneの情報配信が可能になり、顧客エンゲージメントの向上が期待できます。
-
トリガー通知やレコメンド配信が可能: ユーザーのアクションに合わせたタイムリーな情報提供により、アプリの利用促進や購買意欲を高められます。
-
利便性を向上させて継続利用につなげられる: LINE上でのスムーズな問い合わせ対応や情報提供により、ユーザーの満足度を高め、継続的なアプリ利用を促します。
デメリット
-
今後の仕様変更によって影響を受けることも考えられる: LINE側のAPI仕様変更などにより、連携機能に影響が出る可能性があります。
-
導入にはコストがかかる: 開発費用や運用・メンテナンスコストが発生します。
-
LINE側で登録されている情報に限りがある: ユーザーの住所など、LINEアカウント以外の詳細な個人情報は連携だけでは取得できない場合があります。
これらのメリット・デメリットを踏まえ、自社の目的やリソースを考慮して導入を検討することが推奨されます。
(1)メリット:顧客エンゲージメント向上、アプリ利用促進、多様な情報伝達、効率的なコミュニケーション
自社アプリとLINEを連携することで、様々なメリットが得られます。主なメリットは以下の通りです。
-
顧客エンゲージメントの向上: LINEのプッシュ通知は開封率が高く、ユーザーとの接触機会が増えます。これにより、継続的なコミュニケーションが可能となり、顧客の関心を引きつけやすくなります。
-
アプリ利用の促進: LINEからの通知や誘導を通じて、自社アプリへのアクセスや利用を促すことができます。特に利用頻度が低下しているユーザーへの再活性化に効果が期待できます。
-
多様な情報伝達: テキストだけでなく、画像、動画、リッチメッセージなど、LINEの豊富な表現力を活用して、より魅力的で分かりやすい情報をユーザーに届けることができます。
-
効率的なコミュニケーション: 定型的な問い合わせへの自動応答や、セグメントされたユーザーへの一斉配信などにより、個別の対応にかかるコストや時間を削減し、効率的なコミュニケーションを実現します。
これらのメリットを通じて、顧客満足度を高め、ビジネス成果に繋げることが期待できます。
(2)デメリット:開発コスト、運用工数、仕様変更リスク、個人情報管理
自社アプリとLINE連携には多くのメリットがありますが、いくつかのデメリットも存在します。主なデメリットは以下の通りです。
デメリット項目 |
詳細 |
---|---|
開発コスト |
連携機能の実装には専門知識が必要なため、内製または外注により開発費用が発生します。 |
運用工数 |
連携後のシステム維持やトラブル対応に運用工数がかかります。 |
仕様変更リスク |
LINE側のAPI仕様変更があった場合、アプリ側の改修が必要になる可能性があります。 |
個人情報管理リスク |
ユーザーの個人情報を取り扱うため、厳重な管理体制が必要です。 |
特に開発においては、SNS側から提供されるAPIキーの取得や、OAuth/OpenID Connectといったプロトコルの理解が必要となるため、専門知識が不可欠です。導入を検討する際は、これらのデメリットも十分に考慮し、計画を進めることが重要です。
自社アプリとLINE連携にかかる費用
自社アプリとLINEの連携には、Messaging APIの利用料、開発費用、運用・保守費用が発生します。
Messaging APIには無料枠がありますが、メッセージ配信数に応じて有料プランへの移行が必要です。料金体系はLINE社が定めており、利用規模によって変動します。
開発費用は、連携する機能の複雑さや開発を内製するか外部に委託するかによって大きく異なります。外部委託の場合、数十万円から数百万円以上かかるケースもあります。
連携後の運用・保守にも費用がかかります。Messaging APIの利用料に加え、システムの監視やアップデート、問い合わせ対応などの人件費が必要です。
費用を抑える方法として、LINEミニアプリの活用も考えられます。LINEミニアプリはWebベースで開発できるため、ネイティブアプリ開発に比べてコストを削減できる場合があります。ただし、LINEミニアプリとネイティブアプリの連携は、提供したいサービス内容によって実現可否や開発難易度が異なります。
費用項目 |
内容 |
備考 |
---|---|---|
Messaging API利用料 |
メッセージ配信数に応じた従量課金 |
無料枠あり、規模で変動 |
開発費用 |
システム設計・実装(内製/外注) |
機能や開発規模で大きく変動 |
運用・保守費用 |
システム監視、アップデート、問い合わせ対応 |
人件費、インフラ費用など |
(1)Messaging APIの料金体系(無料枠と有料プラン)
Messaging APIは無料で始めることができ、誰でもLINE公式アカウントからメッセージを送信できます。
Messaging APIの料金は、LINE公式アカウントの料金プランによって異なります。各プランには毎月一定数の無料メッセージ送信枠が設けられています。無料枠を超えてメッセージを送信する場合に料金が発生する仕組みです。
料金プラン(日本国内の場合):
-
フリープラン: 月額無料。メッセージ送信数に上限があります。
-
ライトプラン: 月額有料。フリープランより多くのメッセージを送信できます。
-
スタンダードプラン: 月額有料。さらに多くのメッセージを送信できます。
詳しい料金や無料メッセージの上限数は、LINE公式アカウントの公式サイトで確認できます。Messaging APIで送信したメッセージ数のみが課金対象となり、LINE Official Account Managerから手動で送信したメッセージ数は含まれません。
【文字数カウント】
約300文字
(2)開発費用(内製・外注の場合)
自社アプリとLINE連携の開発にかかる費用は、内製するか外注するかで大きく異なります。
内製の場合
社内にLINE Messaging APIに関する知見や開発スキルを持つ人材がいれば、外注費はかかりませんが、人件費や開発環境構築費が発生します。また、専門知識を持つ人材の確保・育成が必要です。
外注の場合
アプリ開発を専門会社に委託する場合、開発内容によって費用は大きく変動します。Messaging API連携機能の複雑さ、既存アプリの仕様、開発会社の技術力や実績などが影響します。
一般的なアプリ開発費用は内容によって幅広く、例えば実店舗の受付管理アプリで15万円~、医療系予約お知らせシステムで20万円~、大手企業対応カタログアプリで55万円~といった例が紹介されています。LINE連携の機能開発も、これらの開発費用に上乗せされる形で発生すると考えられます。
費用の見積もりを取る際は、連携したい機能や要件を明確に定義し、複数の開発会社から見積もりを取得することが重要です。
(3)運用・保守費用
自社アプリとLINE連携の運用・保守にかかる費用についてご説明します。
アプリはリリース後も、安定稼働のための監視や不具合対応、機能追加などが必要です。これらにかかる費用が運用・保守費用です。
アプリ開発費用の15%程度が運用・保守費用の相場とされています。具体的な内訳としては、主に以下の項目が挙げられます。
-
サーバー費用:
-
ユーザー数やデータ量に応じて変動します。
-
個人規模で月額数千円から、大規模になるほど高額になります。
-
-
一般的な保守・運用費用:
-
不具合修正費用(特にリリース直後や機能追加後)
-
データベース構築・維持費用
-
-
ネイティブアプリ固有の維持費用:
-
アプリストア登録の更新費用(App Storeは年間約1.4万円)
-
OS(iOS/Android)アップデート対応費用
-
-
その他:
-
Webも構築する場合はSSL証明書費用やドメイン費用
-
人件費(不具合修正などの対応要員)
-
特にOSアップデートへの対応は、アプリの安定稼働に不可欠であり、毎年発生する費用として考慮しておく必要があります。
自社アプリとLINE連携の具体的な進め方
自社アプリとLINE連携を進める際は、以下のステップで計画的に行うことが重要です。
-
連携の目的と要件定義
-
「なぜLINEと連携するのか?」「何を実現したいのか?」といった目的を明確にします。
-
プッシュ通知の強化、セグメント配信、自動応答など、具体的な機能要件を定義します。
-
アプリ側とLINE側のどちらでどのような処理を行うかなど、技術的な要件も固めます。
-
-
開発・実装
-
LINEが提供するMessaging APIなどを利用して開発を進めます。
-
特に、アプリユーザーとLINEユーザーを結びつける「ID連携」の実装が重要な鍵となります。ID連携により、自社顧客データに基づいたパーソナライズされた情報配信などが可能になります。
-
開発は内製または外部委託で行います。
-
-
テスト・リリース
-
開発した機能が意図通りに動作するか、アプリ側とLINE側の連携がスムーズかなどを徹底的にテストします。
-
ユーザー体験(UX)にも配慮し、ID連携の手順なども分かりやすいか確認します。
-
問題がなければリリースします。
-
-
効果測定と改善
-
連携後のメッセージ開封率、CTR、CVR、ブロック率などを測定します。
-
得られたデータを分析し、配信内容や方法、連携機能などを継続的に改善していくことで、より高い効果を目指します。
-
(1)連携の目的と要件定義
自社アプリとLINEを連携させる上で、まず最も重要なのは「連携の目的」を明確にすることです。なぜLINEと連携させる必要があるのか、どのような課題を解決したいのか、どのような効果を期待するのかを具体的に定義します。
例えば、以下のような目的が考えられます。
-
顧客エンゲージメントの向上: LINEを通じたパーソナライズされたコミュニケーションで顧客との関係性を強化
-
アプリ利用率の向上: LINEからの導線や通知でアプリへの再訪を促進
-
業務効率化: LINE上での手続きや問い合わせ対応を自動化
目的が定まったら、次に「要件定義」を行います。これは、目的を達成するために具体的にどのような機能を実装する必要があるのか、どのようなデータを連携させるのかなどを詳細に決める工程です。
LINEミニアプリの事例として、デジタル会員証、モバイルオーダー、順番待ち・呼び出し、予約といったサービスが挙げられており、これらを自社アプリの機能と連携させることで、顧客体験の向上や業務効率化が図れることが示唆されています。
例えば、
目的 |
具体的な連携機能例 |
---|---|
顧客体験向上 |
アプリの会員情報をLINEデジタル会員証と連携、予約や注文完了通知をLINEで配信 |
業務効率化 |
LINE上でのFAQ応答、アプリ内のお問い合わせフォームとLINEでのチャットサポート連携 |
アプリ利用促進 |
アプリの最新情報やお得なクーポンをLINEで通知、LINEからアプリの特定ページへの導線設置 |
このように、目的と要件を明確にすることで、必要な機能や開発内容が整理され、その後の開発・実装フェーズがスムーズに進みます。
(2)開発・実装
LINEとアプリを連携するための開発・実装フェーズでは、主に「LIFFアプリ」または「LINEミニアプリ」のどちらを選択するかが鍵となります。
LIFF(LINE Front-end Framework)アプリは、LINEアプリ内で動作するWebアプリケーションですが、Webブラウザでの利用も可能です。開発後のLINE側の審査が不要なため、比較的早くリリースできる点が特徴です。
一方、LINEミニアプリは、スマホ版LINE内で動作するWebアプリケーションで、LIFF環境で動きます。こちらはLINE側の厳格な審査が必要となりますが、インストール不要でユーザーが利用しやすいというメリットがあります。
どちらを選択するかは、連携の目的や機能、開発リソース、リリースまでのスピードなどを考慮して決定します。開発は内製または外部委託で行い、API連携やUI/UX設計、セキュリティ対策などを慎重に進めます。
種類 |
動作環境 |
LINE審査 |
リリース速度 |
---|---|---|---|
LIFFアプリ |
LINEアプリ内、Webブラウザ |
不要 |
速い |
LINEミニアプリ |
スマホ版LINE内 |
必須 |
LIFFより遅い |
開発・実装においては、LINE Developersサイトのドキュメントを参照しながら進めることが重要です。
(3)テスト・リリース
連携開発が完了したら、次に重要なのがテストです。ユーザーにストレスなく利用してもらうため、様々なケースを想定した thorough なテストを実施します。
具体的には、以下のようなテストを行います。
-
機能テスト: 連携機能が設計通りに動作するか。
-
パフォーマンステスト: 大量のメッセージ送信や同時アクセスに耐えられるか。
-
セキュリティテスト: 情報漏洩や不正アクセスへの対策は十分か。
-
ユーザー受け入れテスト (UAT): 実際のユーザーに近い立場で操作し、問題がないか確認。
「LINE WORKSラジャー」の事例では、正式リリース前に約300社が参加するβテストを実施し、実際の業務現場での検証を重ねたとあります。このようなβテストは、多様な環境での動作確認やユーザーからのフィードバック収集に非常に有効です。
テストで発見された問題を修正し、品質が確保できたらリリースとなります。リリース後も、ユーザーの利用状況をモニタリングし、継続的な改善に繋げることが大切です。
(4)効果測定と改善
LINE連携した施策は、実施して終わりではなく、効果測定と継続的な改善が重要です。
例えば、LINEミニアプリを活用したキャンペーンでは、以下のような項目を測定し、分析することが効果的です。
-
来店予約数の変化
-
クーポン利用率
-
特定のセグメントへの通知開封率
-
LINE経由の売上
これらのデータを分析することで、どの施策が顧客エンゲージメントや売上向上に貢献しているかを把握できます。効果の高かった施策はさらに強化し、期待した効果が得られなかった施策は改善策を検討します。
効果測定の例:
施策内容 |
測定項目 |
効果測定の目的 |
---|---|---|
セグメント別プッシュ通知 |
開封率、クリック率 |
ターゲットに響くメッセージ内容や配信タイミングの特定 |
デジタルポイントカード |
ポイント利用率、来店頻度 |
リピーター育成効果の評価 |
予約・注文機能 |
利用率、キャンセル率 |
利便性向上による利用促進、機会損失の削減 |
このように、データに基づいた継続的な改善サイクルを回すことで、アプリとLINE連携の効果を最大化できます。
LINE連携可能なアプリについて相談できる企業例
自社アプリとLINE連携を実現するためには、専門的な知識や開発リソースが必要となる場合があります。内製が難しい場合は、外部の専門企業に相談するのも一つの方法です。
直接的に「自社アプリとLINE連携の開発を請け負う企業」の情報は明確に読み取れませんでした。資料で言及されている「LINEミニアプリ」は、LINE上で特定の機能を提供するものであり、既存の自社ネイティブアプリとの連携とは性質が異なります。
しかし、LINE関連の開発や企業向けソリューションに知見を持つ企業は多く存在します。例えば、LINEの法人向けサービスに詳しい開発会社や、CRM、MAツールを提供しておりLINE連携機能をオプションとして持つ企業などが考えられます。
具体的な相談先を見つける際は、以下の点を考慮して選ぶと良いでしょう。
-
実績: LINE連携や自社アプリ開発の実績が豊富か。
-
得意分野: 連携したい機能や目的に特化したソリューションがあるか。
-
サポート体制: 開発だけでなく、運用や保守のサポートも提供しているか。
自社アプリとLINEの連携は、技術的な専門知識が必要になるため、外部の専門企業に相談することを検討してみましょう。多くのシステム開発会社や、LINEの法人向けサービスに特化した企業が、連携開発のソリューションを提供しています。
相談先としては、以下のような企業が挙げられます。
-
LINEテクノロジーパートナー: LINEが認定する、技術的に優れたソリューションを提供できる企業群です。
-
システム開発会社: アプリ開発やAPI連携の実績が豊富な企業に相談できます。
-
CRM/MAベンダー: LINE連携機能を標準搭載またはオプションで提供している場合があります。
これらの企業は、要件定義から開発、運用まで、一気通貫でサポートしてくれる場合が多いです。複数の企業から提案を受け、自社の目的や予算に合ったパートナーを選ぶことが重要です。
(1)エンバーポイント株式会社
自社アプリとLINEの連携を検討されている企業様は、エンバーポイント株式会社にご相談してみてはいかがでしょうか。
エンバーポイント株式会社は、LINEに関するシステムを含む様々な提案が可能です。
-
セキュリティとサポートへの高い評価: 多くの大手企業、金融機関、官公庁、自治体への導入実績があり、安心して利用できます。
-
導入実績: 数多くの実績から得たノウハウに基づいた提案が期待できます。
ビジネスを成功に導くパートナーとして、真摯に寄り添いながら、導入をサポートしてくれるでしょう。LINE連携アプリの導入を検討されている場合は、お気軽にお問い合わせください。
(2)iMyFone(情報提供元として)
自社アプリとLINE連携を検討する際、LINEのデータ移行やバックアップに関するツールを提供している企業も参考になります。iMyFoneは、LINEのトーク履歴などを異なるOS間で移行したり、PCにバックアップしたりするツール「iMyFone iTransor for LINE」を提供しています。
このツールは、LINEの旧バージョンを利用したり、アシスタントアプリをインストールしたりすることで、通常では難しいLINEデータの取り扱いを可能にしています。特に、Android端末でLINEのローカルバックアップがサポートされていない点や、メディアファイルが複数箇所に保存される点に対応するために、これらの手順が必要となるようです。
ただし、iMyFone自体は直接的に自社アプリとLINEのMessaging API連携開発を請け負う企業ではなく、主にLINEデータの管理・移行ツールを提供している点にご留意ください。連携開発を検討する場合は、開発実績のある企業に相談するのが適切でしょう。
(3)LINEモバイル(情報提供元として)
LINEモバイルは、自社サービスであるモバイル通信サービスとLINEアプリを連携させることで、ユーザーの利便性向上を図っています。
LINEモバイル公式アカウントと友だちになると、以下のことがLINEアプリ上で行えるようになります。
-
最新情報やキャンペーン情報の受け取り
-
自動AIによるFAQ対応(24時間対応)
さらに、契約者連携を行うことで、以下の機能も利用可能です。
-
データプレゼント(余ったデータ容量を友だちに贈る)
-
利用データ量の確認
-
マイページへの簡易ログイン
特に、利用者連携を行うと、利用コードの入力などの簡単な手続きでデータプレゼントや利用データ量の確認が手軽にできるようになります。
このように、LINEモバイルはLINEアプリを単なる情報発信ツールとしてだけでなく、ユーザーサポートや契約情報確認、さらにはデータ共有といったサービス利用に直結する機能を提供するために活用しています。
まとめ:アプリとLINE連携で顧客体験を向上させよう
ここまで、自社アプリとLINE連携の可能性について見てきました。
LINEは国内月間アクティブユーザー数が9,000万人と非常に多く、日本人の生活に深く根付いています。一方で、アプリの利用率は低下傾向にあるという課題もあります。
このような状況において、自社アプリとLINEを連携させることは、顧客体験を向上させる有効な手段となります。
連携で実現できること(例)
-
プッシュ通知の開封率向上
-
顧客属性や行動に基づいたセグメント配信
-
One to Oneのコミュニケーション
事例では、LINE連携ツールを活用することで、売上116%向上やCVR120%向上といった成果が出ています。
もちろん、開発コストや運用工数といったデメリットも考慮する必要がありますが、Messaging APIを活用することで、顧客一人ひとりに寄り添ったパーソナライズされたコミュニケーションが可能になり、結果として顧客エンゲージメントを高め、顧客体験を向上させることができます。
自社アプリのさらなる活用と顧客満足度向上を目指す上で、LINE連携は検討に値する強力な選択肢と言えるでしょう。