はじめに:病院・クリニック経営におけるLINE公式アカウントの可能性
病院やクリニックの経営において、コスト削減や業務効率化は喫緊の課題です。日本病院会を含む3団体が行った調査では、2022年度の医業利益で約7割の病院が赤字という厳しい状況が報告されています。
このような背景の中、注目されているのがLINEのビジネスアカウント「LINE公式アカウント」です。LINEは国内月間利用者数9,700万人以上(2024年3月末時点)と、幅広い層に利用されており、特に地域に根差した医療機関にとって有効なツールとなり得ます。
メッセージの開封率が高く、重要な情報伝達がスムーズに行える点も大きなメリットです。休診や代診といった緊急のお知らせも即座に届けられるため、患者さんとの情報伝達の齟齬を防ぎ、トラブルを回避できます。
また、専用アプリのダウンロードが不要なため、患者さんの利便性を損なうことなく、予約や情報提供といった様々なサービスを提供できる可能性があります。
本記事では、このLINE公式アカウントが病院・クリニック経営にもたらす可能性について、詳しく解説していきます。
なぜ病院・クリニックにLINE公式アカウントが有効なのか?
病院やクリニックにおいてLINE公式アカウントは、多くの患者さんと手軽に繋がる有効なツールです。その理由を3つのポイントでご紹介します。
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幅広い年齢層へのリーチ
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LINEの月間利用者数は9,700万人(2024年3月時点)に達しており、幅広い年齢層に浸透しています。
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多くの人が日常的に利用しているため、患者さんは新たにアプリをダウンロードする手間なく、友だち追加できます。
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高い情報伝達力(開封率)
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LINEユーザーの約6割がメッセージをほぼ全て確認しているというデータがあります。
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休診情報や予防接種の案内など、重要な情報を患者さんに確実に届けやすいのが特徴です。
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患者さんの利便性向上
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友だち追加するだけで、情報を受け取ったり、予約や問い合わせをしたりできるようになります。
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電話やメールよりも手軽に医療機関とコミュニケーションが取れるため、患者さんのストレス軽減や満足度向上につながります。
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これらの理由から、LINE公式アカウントは、患者さんとの円滑なコミュニケーションを実現し、医院・クリニックの運営効率化に貢献する可能性を秘めています。
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(1)幅広い年齢層へのリーチ
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(病院やクリニックにおいてLINE公式アカウントは、多くの患者さんと手軽に繋がる有効な
(1)幅広い年齢層へのリーチ
LINEは、日本国内で非常に多くのユーザーに利用されているコミュニケーションツールです。2024年3月時点で、そのユーザー数は9,700万人にも上ります。
特筆すべきは、そのユーザー層の幅広さです。年代や性別、お住まいの地域に関わらず、多くの方が日常的にLINEを利用しています。
これは、病院やクリニックが特定の層だけでなく、潜在的な患者さんを含む幅広い人々に情報を届けられる大きなメリットとなります。例えば、
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高齢者向けの健康情報
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子育て世代向けの予防接種情報
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若年層向けの皮膚科や美容関連情報
など、ターゲットを絞らずとも多くの人にアプローチできるため、新規患者さんの獲得や休眠患者さんへの再アプローチにも有効です。
LINEを通じて、世代を超えた多くの患者さんに必要な情報をタイムリーにお届けし、クリニックの存在を身近に感じてもらうことが期待できます。
(2)高い情報伝達力(開封率)
LINE公式アカウントを活用する大きなメリットの一つに、情報の「高い伝達力」があります。特に、プッシュ通知によるメッセージ配信は、メールマガジンなどに比べて格段に開封率が高い傾向にあります。
なぜなら、多くの人が日常的にLINEを使用しており、メッセージが届くとすぐに気づきやすいからです。
この高い開封率を活かすことで、クリニックは以下のような重要な情報を、より確実に患者さんへ届けることができます。
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緊急性の高い情報
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急な休診・代診のお知らせ
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災害時の診療に関する情報
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重要な告知
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予防接種の開始・予約受付
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健康診断のお知らせ
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新しい診療時間
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役立つ情報
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季節の健康アドバイス
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病気に関するコラム
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このように、LINE公式アカウントは、クリニックからの情報を患者さんの手元にダイレクトかつスピーディーに届ける強力なツールと言えます。これにより、患者さんの「知りたい情報にアクセスしやすい」という利便性向上にもつながります。
(3)患者さんの利便性向上
患者さんにとって、病院やクリニックを利用する際の利便性は非常に重要です。LINE公式アカウントは、この利便性を大きく向上させることができます。
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専用アプリ不要の気軽さ
近年、治療用やヘルスケアなど様々な医療系アプリが登場していますが、患者さんがわざわざ新しいアプリをダウンロードするのは手間に感じられることがあります。LINE公式アカウントなら、普段から使い慣れているLINEアプリの中で、様々な機能を利用できます。 -
機能の集約による利便性
LINE上で予約や問い合わせ、最新情報の確認などが完結できるため、患者さんは複数のツールを使い分ける必要がありません。 -
即時性の高い情報伝達
休診や診療時間の変更といった緊急性の高い情報も、LINEなら即座に患者さんの手元に届けられます。これにより、患者さんが来院してから情報を知るといったトラブルを防ぎ、無駄な移動や待ち時間を削減できます。
このように、LINE公式アカウントは患者さんにとって、よりスムーズでストレスの少ない医療体験を提供するために有効なツールです。
LINE公式アカウントで実現できる病院・クリニックの課題解決・メリット
病院やクリニックの経営において、集患や業務効率化は重要な課題です。LINE公式アカウントは、これらの課題を解決し、多くのメリットをもたらします。
主なメリットは以下の通りです。
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情報発信の効率化:
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休診や診療時間変更などの重要なお知らせを、高い開封率で迅速に届けられます。
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健康情報や新しい診療メニューなども手軽に発信できます。
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予約・問い合わせ対応の効率化:
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自動応答メッセージでよくある質問に対応し、電話対応の負担を軽減できます。
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リッチメニューから予約システムへスムーズに誘導できます。
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患者さんとの関係構築・満足度向上:
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個別チャットで患者さんの疑問に寄り添った対応が可能です。
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ステップ配信で段階的に情報を提供し、信頼関係を築けます。
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リピート率・再診率の向上:
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クーポン配布やショップカード機能で再来院を促進できます。
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業務負担の軽減とコスト削減:
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情報発信や問い合わせ対応の効率化により、スタッフの業務負担を減らせます。
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これらの機能を活用することで、患者さんの利便性を高めつつ、クリニック側の運用効率を大幅に改善することが期待できます。
(1)情報発信の効率化(休診、健康情報、新サービス)
病院やクリニックから患者さんへの情報伝達は、運営において非常に重要です。特に休診情報や診療時間の変更などは、患者さんの来院に直接影響するため、正確かつ迅速に伝える必要があります。
LINE公式アカウントを活用することで、これらの情報伝達を効率化できます。メッセージの一斉配信機能を使えば、登録しているすべての友だち(患者さん)に、同じメッセージを一度に送信することが可能です。これにより、電話や個別のメール対応に比べて、大幅な手間を省くことができます。
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LINE公式アカウントによる情報発信のメリット
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休診・代診情報の迅速な伝達
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健康情報や予防接種のお知らせ
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新しい診療メニューやサービスの告知
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災害時などの緊急連絡
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特に休診や代診といった重要なお知らせは、メッセージの開封率が高いLINEであれば、多くの患者さんに即座に届けられます。これにより、情報の伝達漏れによるトラブル防止にも効果的です。
(2)予約・問い合わせ対応の効率化(自動応答、スムーズな誘導)
患者さんからの予約や問い合わせ対応の効率化は、医療機関の大きな課題の一つです。LINE公式アカウントを活用することで、これらの業務を効率化し、患者さんの利便性も向上させることができます。
予約システムへのスムーズな誘導
LINE公式アカウントの「リッチメニュー」を活用することで、トーク画面の下部に常に表示されるボタンから、ホームページや予約システムへ直接誘導できます。これにより、患者さんは迷うことなく予約ページにアクセスできるようになります。
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リッチメニューに「予約はこちら」ボタンを設置
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ボタンをタップすると外部の予約システムに遷移
自動応答による問い合わせ対応
患者さんからよく寄せられる質問(診療時間、アクセス、駐車場など)に対して、自動応答メッセージを設定しておくことが可能です。これにより、スタッフが個別に返信する手間が省け、問い合わせ対応の負担を大幅に軽減できます。
キーワード例 |
設定する自動応答メッセージ例 |
---|---|
診療時間 |
平日 午前9:00-12:00 午後14:00-18:00 土曜 午前のみ |
駐車場 |
クリニック裏に〇台分の駐車場がございます。 |
これらの機能を活用することで、患者さんはいつでも必要な情報を得られるようになり、スムーズな予約や問い合わせが可能になります。
(3)患者さんとの関係構築・満足度向上(個別メッセージ、リマインダー)
LINE公式アカウントは、患者さん一人ひとりに合わせたコミュニケーションを可能にし、関係構築や満足度向上に役立ちます。
具体的な活用例
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個別メッセージ:
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診療内容に合わせたアフターフォローメッセージ
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検査結果に関する個別のお知らせ
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リマインダー機能:
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次回の予約日時の通知
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予防接種や健康診断の時期の通知
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これらの機能を活用することで、患者さんは必要な情報を忘れずに受け取ることができ、医療機関への信頼感が高まります。
また、定期的な健康情報や予防接種の案内を配信することで、患者さんとの接点を増やし、再診率の向上にもつながります。
機能 |
効果 |
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個別メッセージ |
パーソナルな情報提供、信頼性向上 |
リマインダー |
受診忘れ防止、計画的な健康管理を促進 |
患者さんにとって役立つ情報を適切なタイミングで届けることが、満足度を高める鍵となります。
(4)リピート率・再診率の向上
安定した病院・クリニック経営には、一度来院された患者さんのリピート率や再診率を高めることが重要です。LINE公式アカウントは、この点においても有効なツールとなり得ます。
具体的な施策としては、以下のようなものがあります。
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クーポン機能の活用:
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月の初めにクーポンを配布するなど、定期的な配信で再来院のきっかけを作ります。
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キャンペーン情報の配信:
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季節の健康診断や予防接種など、関連性の高いキャンペーン情報をタイムリーに届けます。
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ショップカード機能:
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来院ごとにポイントを付与し、貯まったポイントに応じて特典(例:次回施術割引など)を提供することで、再診を促します。
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これらの機能を活用することで、患者さんは病院・クリニックの存在を定期的に思い出し、再診への動機付けにつながります。LINEを通じた継続的なアプローチは、患者さんとの関係性を深め、リピート率・再診率の向上に貢献します。
(5)業務負担の軽減とコスト削減
LINE公式アカウントを導入することで、病院やクリニックの業務負担を大幅に軽減し、結果的にコスト削減につなげることが可能です。
例えば、
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よくある問い合わせへの自動応答:
「駐車場はありますか?」「診療時間を教えてください」といった定型的な質問に対して、事前に設定した自動応答メッセージで対応できます。これにより、電話や窓口での対応時間を削減できます。 -
一斉情報配信:
休診や診療時間の変更、インフルエンザ予防接種のお知らせなど、多くの患者さんに一度に情報を届けられます。個別に連絡する手間が省け、スタッフの負担を軽減できます。 -
予約システムとの連携:
LINEから予約システムへスムーズに誘導することで、電話予約の対応時間を減らせます。
病院・クリニック向けLINE公式アカウントの開設・設定ステップ
病院やクリニックのLINE公式アカウント開設は、オンラインで簡単に手続きできます。まずはアカウントを作成し、次に認証済アカウントの申請を行うのがおすすめです。認証済アカウントになると、LINE内検索で表示されやすくなり、友だち追加広告も利用可能になるため、集患に繋がります。信頼度向上にも有効です。
アカウント開設後は、初期設定としてプロフィールを充実させることが重要です。医院の情報や診療時間などを正確に記載し、患者さんが知りたい情報にすぐにアクセスできるように最適化しましょう。
LINE公式アカウントには無料プランと有料プランがありますが、基本的な機能は同じです。まずは無料プランから始めてみて、必要に応じてプラン変更を検討できます。
開設・設定のステップは以下の通りです。
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アカウントの開設: LINE公式アカウントページから手続き
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認証済アカウントの申請: 審査通過で信頼度・検索性が向上
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初期設定・プロフィール最適化: 医院情報を充実させ、分かりやすく設定
これらのステップを踏むことで、LINE公式アカウント活用の第一歩を踏み出せます。
(1)アカウントの作成手順
病院やクリニックがLINE公式アカウントを導入する際の最初のステップは、アカウントの作成です。公式サイトから簡単に手続きを進めることができます。
アカウント作成の手順は以下の通りです。
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LINE公式アカウント公式サイトにアクセスします。
-
「アカウントを作成」ボタンをクリックします。
-
必要な情報(アカウント名、業種など)を入力し、登録を完了させます。
アカウント作成後、基本設定に進みます。
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診療時間
-
連絡先
-
病院・クリニックのロゴ
これらの情報を入力し、プロフィールを充実させることで、患者さんにとって分かりやすいアカウントになります。
また、運用開始前に挨拶メッセージやチャットボットの設定、配信コンテンツや運用方針を決めておくと、その後の運用がスムーズになります。
設定項目 |
内容例 |
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挨拶メッセージ |
友だち追加時のお礼、利用方法の案内 |
チャットボット |
よくある質問(診療時間、アクセスなど)への自動応答 |
運用方針 |
配信頻度、内容(健康情報、休診案内など) |
これらの初期設定を丁寧に行うことで、患者さんとのコミュニケーションを効率化し、業務負担の軽減につなげることができます。
(2)認証済アカウントの申請メリット
LINE公式アカウントには、未認証アカウントと認証済アカウントがあります。認証済アカウントは、LINEヤフー社の審査を通過したアカウントに付与されるもので、病院やクリニックが取得することには以下のような大きなメリットがあります。
メリット |
詳細 |
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検索結果への表示 |
LINEアプリ内の検索結果に表示されるようになり、患者さんが見つけやすくなります。 |
信頼性の向上 |
LINEヤフー社のお墨付きを得られるため、医院としての信頼度が高まります。 |
友だち追加広告の利用 |
LINE広告を活用して、効率的に友だちを増やすことが可能になります。 |
ノベルティなどの利用 |
販促用ノベルティを利用できるようになります。 |
有料プランの決済方法追加 |
有料プランの支払い方法に、請求書決済などが選択可能になります。 |
特に、地域に根差した病院やクリニックにとって、LINEアプリ内での検索表示は新たな患者さんとの接点となり得ます。また、医療機関選びにおいて信頼性は非常に重要な要素であるため、認証済アカウントの取得は患者さんの安心感につながります。
(3)初期設定とプロフィールの最適化
アカウント開設後、患者さんがクリニックの情報にアクセスしやすく、安心して利用できるよう、初期設定とプロフィールの最適化は非常に重要です。
プロフィールの充実
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クリニックのロゴや代表的な写真を設定し、視覚的に覚えやすくします。
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診療時間、所在地、電話番号などの基本情報を正確に記載します。
-
クリニックの特徴や診療方針などを簡潔に紹介します。
自動応答メッセージの設定
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初回メッセージに対して、感謝の言葉や利用案内を自動で返信するように設定します。
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「○○クリニックへのお問い合わせありがとうございます。自動応答にてご案内しております。ご用件を選択してください。」といったメッセージが有効です。
リッチメニューの活用
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予約ページ、診療時間、アクセス情報、よくある質問など、患者さんが頻繁に利用するであろう項目をボタンとして配置します。
-
視覚的に分かりやすいデザインにし、患者さんの操作性を向上させます。
プライバシー設定の確認
-
患者さんの情報を適切に保護するため、プライバシー設定を確認し、必要な設定を行います。
これらの設定を丁寧に行うことで、患者さんの利便性が向上し、クリニックへの信頼感にも繋がります。
効果的な運用を実現するためのポイント
LINE公式アカウントを病院やクリニックで効果的に運用するには、いくつかの重要なポイントがあります。まず、友だちを増やすための戦略が必要です。院内での告知はもちろん、ホームページやSNSなどオンラインでの導線確保が有効です。
次に、メッセージ配信の頻度と内容です。ユーザーが期待する情報としては、クーポンやセール情報、最新情報、お得な情報などが挙げられます。これらの情報を適切な頻度で配信することで、ユーザーの関心を維持できます。
また、チャットボットや自動応答機能を活用することで、よくある質問への対応を効率化し、患者さんの待ち時間を減らすことができます。「駐車場」や「診療時間」といったキーワードに自動応答を設定することが有効です。
さらに、効果測定を行い、分析に基づいた改善サイクルを回すことが重要です。例えば、メッセージの開封率やクリック率などを分析し、配信内容やタイミングを調整することで、より効果的な運用を目指せます。
ポイント |
具体的な施策例 |
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友だち増加戦略 |
院内ポスター、HP/SNS連携、口コミ誘導 |
メッセージ配信 |
クーポン、健康情報、休診情報、適切な頻度 |
自動応答・チャットボット |
よくある質問対応(診療時間、アクセスなど) |
分析と改善 |
開封率・クリック率分析、配信内容・タイミング調整 |
これらのポイントを押さえることで、LINE公式アカウントを患者さんとの関係構築や業務効率化に役立てることができるでしょう。
(1)友だち増加のための戦略
LINE公式アカウントを導入しても、友だちになってくれる患者さんがいなければ効果は限定的です。効率的に友だちを増やすための戦略を立てましょう。
友だち増加のための主な方法には、以下の点が挙げられます。
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来院者への直接の声かけ: 診察時や会計時に、口頭でLINE公式アカウントの案内をするのは最も効果的です。
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院内での告知: 待合室や受付にポスター、チラシ、POPなどを設置し、QRコードを掲示します。
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オンラインでの告知: 病院・クリニックのウェブサイトやブログ、SNS(X, Instagramなど)にLINE公式アカウントへのリンクやQRコードを掲載します。特にウェブサイトは、多くの患者さんが情報を得る際に利用するため重要です。
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診察券や予約確認書への記載: 患者さんが持ち帰るものにQRコードやIDを記載します。
厚生労働省の調査によると、医療機関の情報入手先として「家族や知人の口コミ」に次いで「医療機関が発信するインターネットの情報」が重要視されています。オンラインでの情報発信とLINE公式アカウントへの導線を組み合わせることで、集患・増患にもつながります。
(2)メッセージ配信の頻度と内容
LINE公式アカウントからのメッセージは、患者さんとの重要な接点となります。効果的な運用のためには、適切な頻度と内容を意識することが大切です。
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配信内容の例
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休診・代診のお知らせ
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季節ごとの健康管理アドバイス(例:インフルエンザ予防、熱中症対策)
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新しい診療時間やサービスの案内
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院内イベントや健康教室のお知らせ
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患者さんが求める情報は「クーポン」が最も高いという調査結果もありますが、医療機関においては、信頼性のある健康情報や利便性を高めるお知らせがより重要視される傾向にあります。
患者さんの属性や関心に合わせたセグメント配信なども活用し、パーソナルな情報提供を心がけましょう。
(3)チャットボットや自動応答の活用方法
患者さんからよく寄せられる質問への対応を効率化するために、チャットボットや自動応答メッセージの活用がおすすめです。
例えば、「駐車場はありますか?」「今日の診療時間は何時までですか?」といった定型的な質問に対して、あらかじめ設定しておいた回答を自動で返信する機能です。これにより、スタッフが一人ひとり対応する手間が省け、業務負担を大幅に軽減できます。
自動応答を設定する際のポイントは以下の通りです。
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よくある質問をリストアップする: 問い合わせ内容を分析し、頻繁に聞かれる質問を洗い出します。
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キーワードを設定する: 質問に含まれるキーワード(例:「駐車場」「診療時間」「予約」など)を登録します。
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分かりやすい回答文を作成する: 患者さんが疑問を解決できるよう、簡潔で正確な回答を用意します。
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リッチメニューと連携させる: リッチメニューに設定したボタンと自動応答を連携させると、よりスムーズな情報提供が可能です。(例:「予約」ボタンをタップで予約フォームへの誘導メッセージを自動送信)
自動応答やチャットボットを適切に活用することで、患者さんは知りたい情報をすぐに得られるようになり、利便性向上にもつながります。
(4)分析に基づいた改善サイクル
LINE公式アカウントの運用効果を最大化するには、配信したメッセージや施策がどの程度患者さんに届き、どのような反応があったのかを分析し、改善を続けることが不可欠です。
具体的には、以下の指標を確認しましょう。
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メッセージの開封率: どのメッセージが多く読まれているか
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クリック率: メッセージ内のURLなどがどれくらいクリックされたか
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友だち数の推移: 友だちがどのように増減しているか
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ブロック率: どの程度の患者さんがブロックしているか
これらのデータを分析することで、患者さんが興味を持つ情報や、より響くメッセージの形式、最適な配信頻度などを把握できます。
例えば、特定の健康情報に関するメッセージの開封率が高い場合、そのテーマを深掘りした情報を今後も配信する、といった改善が考えられます。また、特定の曜日や時間帯の開封率が高い場合は、その時間に合わせた配信を増やすなども有効です。
このように、データに基づいた分析を行い、配信内容や方法を継続的に見直していくことで、より効果的なLINE公式アカウント運用が可能になり、患者さんの満足度向上や集患・再診率アップにつながります。
病院・クリニックにおけるLINE公式アカウントの活用事例
事例1:皮膚科クリニック
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活用内容: 予約システムとの連携、休診情報の発信、肌トラブルに関するコラム配信
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効果: 予約の利便性向上、患者さんへの継続的な情報提供による信頼関係構築
事例2:健康センター
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活用内容: 健康診断の予約受付、結果通知、健康増進イベントの情報発信
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効果: 予約・通知業務の効率化、利用者への健康意識向上促進
事例3:医療法人
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活用内容: 複数クリニックの情報を集約、採用情報の発信、オンライン診療への誘導
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効果: 患者さんへの情報提供の一元化、採用活動の強化
これらの事例は、LINE公式アカウントが単なる情報発信ツールにとどまらず、予約受付、患者教育、さらには採用活動まで、幅広い用途で活用されていることを示しています。
(1)クリニックの運用事例
クリニックでのLINE公式アカウント活用事例として、皮膚科クリニックのケースが参考になります。
このクリニックでは、主に以下の目的でLINE公式アカウントを運用しています。
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業務効率化: 一斉配信や自動応答メッセージを活用し、よくある質問への対応や休診案内などを効率化。
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予約誘導: リッチメニューや自動応答で予約システムへの導線を分かりやすく設置。
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患者教育・ファン化: ステップ配信を用いて、クリニックや医師の紹介、デンタルケア情報などを段階的に配信。
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コミュニケーション: チャット機能で個別相談に対応。
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再診率向上: クーポン配布やショップカード機能で来院を促進。
特にステップ配信による患者教育は、信頼関係構築や集患率向上に貢献しているようです。また、予約システムとの連携や自動応答による問い合わせ対応の効率化は、日々の業務負担軽減に繋がっています。
これらの施策を組み合わせることで、患者さんの利便性を高めつつ、クリニック側の業務効率化や集患・再診率向上を実現しています。
(2)医療機関の導入成功例
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予約数の向上: LINEでの24時間予約受付導入により、患者さんの利便性が高まり予約数の増加につながっています。
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キャンセル率の低下: 予約前日にLINEでリマインドメッセージを送ることで、「うっかり忘れ」による無断キャンセルが減少しています。
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問い合わせ対応の効率化: よくある質問への自動応答や、予約フォームへのスムーズな誘導により、電話対応の負担が軽減されています。
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再診率の向上: 定期検診や健康に関する情報をLINEで配信することで、患者さんの再診意欲を高めています。
特に、美容クリニックなどでは予約忘れ防止に効果を発揮しており、インフルエンザ流行期など予約が集中する時期には、一斉配信によるスムーズな予約受付が業務効率化に貢献しています。
これらの事例は、LINE公式アカウントが単なる情報発信ツールとしてだけでなく、患者さんとのコミュニケーションを深め、具体的な経営課題解決に貢献することを示しています。
運用上の注意点と考慮すべき事項
LINE公式アカウントを病院やクリニックで運用する際には、いくつかの重要な注意点があります。
まず、最も重要なのは「患者情報の取り扱いに関する配慮」です。LINEでの個別チャットを利用する際は、個人情報や診療情報に関する機密保持に最大限配慮する必要があります。厚生労働省のガイドラインなどを参照し、安全な運用を心がけましょう。
次に「運用体制の構築」です。誰がどのような情報を発信し、問い合わせにどう対応するかなど、院内のルールを明確に定めることが不可欠です。担当者を決め、定期的な情報共有や研修を行うことも大切です。
最後に「費用について」です。LINE公式アカウント自体は無料プランから利用できますが、メッセージ通数に応じて有料プランへの移行が必要になる場合があります。また、予約システム連携やLステップのような拡張機能を利用する場合は、別途費用が発生します。予算計画を立て、費用対効果を考慮して運用プランを検討しましょう。
これらの点に注意し、患者さんの安心・安全を最優先に考えた運用を心がけることが成功の鍵となります。
(1)患者情報の取り扱いに関する配慮
病院やクリニックでLINE公式アカウントを運用する上で、最も重要な点の一つが患者さんの個人情報の取り扱いです。特にLINEのチャット機能などを利用する際には、慎重な対応が求められます。
患者さんのプライバシー保護は医療機関にとって最優先事項です。LINE公式アカウントで患者さんとやり取りする際には、以下の点に特に配慮が必要です。
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個人情報の入力・送信を避ける: 氏名、生年月日、病状などの機微な情報をLINE上で送受信することは極力避けるべきです。
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利用規約・プライバシーポリシーの確認: LINE公式アカウントの利用規約やプライバシーポリシーを理解し、データがどのように扱われるかを確認します。
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セキュリティ対策: アカウントへの不正アクセスを防ぐため、二段階認証の設定などセキュリティ対策を徹底します。
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院内ルールの策定: LINEでの患者対応に関する具体的なルールやガイドラインを策定し、運用担当者間で共有します。
-
同意の取得: 必要に応じて、LINEでの情報連携に関する患者さんの同意を得るプロセスを設けることも検討します。
これらの配慮を行うことで、患者さんの信頼を守りながら、安全にLINE公式アカウントを運用することが可能になります。
(2)運用体制の構築
LINE公式アカウントを効果的に運用するためには、適切な体制を構築することが重要です。
例えば、以下のような役割分担が考えられます。
-
情報発信担当: 休診情報や健康情報などのコンテンツ作成・配信
-
問い合わせ対応担当: チャットでの個別問い合わせへの一次対応
-
分析・改善担当: 配信結果や友だち数の分析、運用計画の見直し
また、自動応答メッセージやステップ配信などを活用することで、手動での対応を減らし、運用負担を軽減することも可能です。これらの機能を効果的に設定・管理する担当者も必要でしょう。
外部の運用支援サービスやツール(Lステップなど)を導入することも、運用負担を減らす有効な手段となります。
(3)費用について
LINE公式アカウントの運用には、月額費用がかかります。費用はメッセージの配信数によって異なり、無料プランから有料プランまで用意されています。
プランごとのメッセージ通数と費用は以下の通りです(2024年5月時点)。
プラン名 |
無料メッセージ通数 |
月額費用(税別) |
---|---|---|
コミュニケーションプラン(無料) |
1,000通 |
0円 |
ライトプラン |
15,000通 |
5,000円 |
スタンダードプラン |
制限なし |
15,000円〜 |
※スタンダードプランはメッセージ通数に応じて費用が変動します。
まずは無料プランから始めて、運用状況に合わせて上位プランへの移行を検討するのが現実的です。
病院・クリニックのLINE公式アカウント運用を支援するサービス・ツール
LINE公式アカウントの導入や運用には、専門的な知識や時間が必要になる場合があります。こうした負担を軽減し、より効果的な運用を実現するために、多くの支援サービスやツールが存在します。
特に、予約システムとの連携や患者さん一人ひとりに合わせた情報配信(ステップ配信)、自動応答による問い合わせ対応の効率化などを強化したい場合には、LINE公式アカウントの機能を拡張するツールが有効です。
例えば、Lステップのようなツールは、以下のような機能を提供し、よりきめ細やかな患者対応や業務効率化をサポートします。
機能例 |
概要 |
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セグメント配信 |
患者さんの属性に応じた情報配信 |
ステップ配信 |
友だち追加後の自動シナリオ配信 |
予約システム連携 |
LINE上での予約受付・管理 |
個別チャット |
患者さんとの1対1のコミュニケーション |
これらのツールを活用することで、限られたリソースでも最大限の効果を引き出し、患者満足度向上や業務効率化につなげることが期待できます。また、運用代行やコンサルティングサービスを提供する企業もあり、自院の状況に合わせて最適な支援を選ぶことができます。
(1)株式会社エッコ
株式会社エッコは、クリニックや病院のLINE公式アカウント運用を支援するサービスを提供しています。特に、クリニックがLINE公式アカウントを導入・活用する際の重要性や具体的なメリットについて、分かりやすく解説している点が特徴です。
サービス内容としては、アカウントの開設手順から初期設定のポイント、効果的な活用事例まで、運用に必要な知識を網羅的にサポートしています。
-
主なサポート内容例:
-
アカウント開設・設定代行
-
メッセージ配信コンテンツ企画
-
チャットボット構築支援
-
友だち増加施策の提案
-
運用代行・コンサルティング
-
同社は、LINE公式アカウントを活用することで、クリニックの集患・患者満足度向上、業務効率化に繋がる具体的な方法を提示しています。特に、休診情報の迅速な伝達や、健康情報の配信、予約・問い合わせ対応の効率化といった、クリニック特有の課題解決に焦点を当てた支援を行っているようです。
(2)株式会社TSクラウド(Lステップ)
株式会社TSクラウドが提供する「Lステップ」は、LINE公式アカウントの機能を拡張し、より高度なマーケティングや顧客対応を可能にするツールです。特に病院やクリニックの運用において、以下のような課題解決に役立ちます。
-
患者教育とファン化の促進: ステップ配信機能により、友だち追加した患者さんに対して、事前に設定したシナリオに沿って段階的に情報を自動配信できます。医師の紹介、デンタルケア情報、利用者の声などを順に送ることで、クリニックへの信頼感を高め、ファン化につなげられます。
-
予約管理機能: Lステップは、予約管理システムとの連携や、LINE上での予約受付をスムーズに行う機能が備わっています。リッチメニューや自動応答メッセージを活用し、患者さんを予約フォームへ簡単に誘導できます。
-
業務効率化とコスト削減: よくある質問への自動応答や、個別メッセージ機能によるきめ細やかな対応は、スタッフの問い合わせ対応負担を軽減します。また、ステップ配信による自動化は、人的コストの削減にもつながります。
-
再診率向上: クーポン配布やショップカード機能など、再診を促すための施策をLINE上で展開できます。ポイント付与による段階的な特典設定は、患者さんのリピート意欲を高めます。
Lステップを活用することで、個別対応の効率化、予約導線の整備、患者さんとの関係性強化を実現し、集患・再診率の向上や業務効率化に貢献します。
(3)株式会社船井総合研究所
船井総合研究所は、医療機関の経営コンサルティングを専門に行っています。特に、集患や患者満足度向上といった課題に対して、具体的な実行策を提案しているのが特徴です。
船井総合研究所はLINEをクリニックの「プッシュ広告」として活用することを推奨しています。これは、患者さんの意思に関わらず情報を届けられるため、潜在的なニーズを掘り起こし、需要を喚起する手段として有効であると考えているからです。
具体的な活用方法としては、以下のような事例が紹介されています。
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新規医療機器や自費診療メニューの紹介
-
WEB予約システムとの連携による予約誘導
-
病気啓発や定期検査の促進
また、セミナー情報では、実際のクライアント事例として以下のような成果を上げています。
分野 |
成果 |
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睡眠時無呼吸症候群 |
月間平均新患2名 → 15名 |
糖尿病 |
新患1名あたり獲得コスト5,000円未満 |
生活習慣病(高血圧等) |
平均新患50名以上/月 |
これらの事例から、船井総合研究所はLINEを活用した具体的な集患・経営改善ノウハウを提供していることがわかります。
まとめ:LINE公式アカウントで築く、選ばれる病院・クリニックへ
医業利益における赤字病院が約7割に上る(2023年度病院経営定期調査より)など、病院やクリニックの経営環境は厳しい状況です。このような状況下で、コスト削減や業務効率化、そして患者さんとの良好な関係構築は喫緊の課題といえます。
本記事では、これらの課題解決に有効なツールとして、LINE公式アカウントの活用について解説しました。LINE公式アカウントは、幅広い年齢層の利用者、高い情報伝達力、そして患者さんの利便性向上といったメリットがあります。
具体的には、以下の点の実現をサポートします。
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情報発信の効率化: 休診情報や健康情報などを確実に届けられます。
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予約・問い合わせ対応の効率化: 自動応答などを活用し、スムーズな対応が可能です。
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患者さんとの関係構築: 個別メッセージやリマインダーで、患者さんの安心感を高めます。
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業務負担の軽減とコスト削減: 定型業務を自動化し、スタッフの負担を減らします。
LINE公式アカウントを適切に運用することで、集患、患者満足度の向上、そして業務効率化を実現し、「選ばれる病院・クリニック」を築く一助となるでしょう。